孫に伝える地球の未来(1) -宇宙の未来

これから毎月20日前後に、「孫に伝える地球の未来」という題で、大好きな宇宙の話をつまみ食いします。

Ⅰ はじめに

  小学生の時に、先生がご自身の天体望遠鏡で「土星」を見せてくれた。 土星の環が見えたわけではないが、子供心に宇宙の話を面白く思った。 当時は沢山の星の名前を憶えていたが、70歳を過ぎた今は覚えていない。 大きくなるにつれ、いろんなことに興味を持ったが、未だに続いているのは、天体・宇宙の事である。 夢のような話が多く、気宇壮大だ。 「未来永劫(みらいえいごう)」という言葉があるが、仏教用語で未来は永久に続くという前提の話である。 実際には、未来は決まっていることがいくつもあって、永久には続かない。 特に、科学的に説明されていれば、予想とは言え現実味がある話だ。 科学が進歩した現代では、かなり確かな予測が報告されている。 そういった話をつまみ食いしてみたので、楽しんで読んで欲しい。

 

Ⅱ 宇宙の未来

1-1 アインシュタインの宇宙項

アイシュタインは、宇宙は変化しないと考え、相対性理論の式に宇宙項を設け、いつまでも変わらない宇宙を想定した。 しかし、1925年ハップルの観測によって、宇宙がどんどん広がっていることを知り、「宇宙項は最大の誤り」だと言ったという。 アイシュタインの重力理論の近似解が、ニュートン万有引力である。 万有引力では、重力のあるものは、距離の2乗に反比例して、互いに引き合う事を意味している。重力のある星は例え遠くても引力が働き、引き合っている力があるに違いない。 そうなら、全ての星は引き合い、いつかは一点に集まることになる。 アイシュタインは、宇宙の全てが1点に集まる未来を認めることができず、安定を守る式:宇宙項を設け、宇宙全体の安定を式に表そうとした。 ところが、ハップルの観測によって、銀河は互いに遠ざかっていることが判った。 すると、宇宙は今後もどんどん遠ざかり、将来は宇宙には銀河団の星だけしか、見えなくなるのだろうか。

 1998年に超新星爆発の観測結果から、重量の効果を打ち消し、宇宙は膨張を続けていることが明らかになった。 又、2015年頃に、世界の天文学者が協力して、ハップル定数(銀河の後退速度)が求められた。 銀河の後退速度が求まると、現在の宇宙の範囲に広がるのに138億年(最近の推定値は137.99±0.21億年)だという。 すなわち宇宙は138億歳ということ。 そして、宇宙はいまだに広がっている事が分かった。

1-2 ビッグバン

 宇宙のはじめは、ビッグバンで何もない所で発生したという。 その証拠として、宇宙のどこからも、均一に来る電波(背景放射)である。 1965年にアンテナの雑音の原因を調べていて、約3K(絶対温度ケルビン)の電波をどの方向からも観測し、ガモフが予測したビッグバンの名残りだとされている。 こうして、宇宙の始まりがビッグバンで、その後の宇宙を現代まで遡れるようになった。

1-3 これからの宇宙はどうなる。

 いくつかの可能性がある。

ⅰ) 星が輝くのは、原料である水素が核融合反応で、ヘリウムに変わり熱を放出しているからである。原料である水素がなくなれば、ヘリウムが他の元素に核融合反応し、最終的には鉄になるという。 その時の宇宙はどんな世界だろうか。空には輝く星もなく、何もない冷たい世界である事は間違いない。

-熱源がなくなり寒い世界になる。

ⅱ) ハップル定数を求めた結果、宇宙は広がっている。それも遠くにある銀河ほど早く遠ざかっている。 たとえ話だが、東京を起点にして大阪迄が約500K、小倉は約1000K。 拡大するというのは、東京から大阪までの距離が倍の1000Kになる時には、小倉は2000Kになっているという事。 遠い星ほど、高速で遠ざかっており、周りには何もない世界が待っている。 -暗黒で、孤独な世界になる

ⅲ) 我々の太陽系は天の川銀河にあり、2000個ぐらいの銀河が集まったおとめ座銀河団と呼ばれる集団にある。 そして2014年に、およそ10万の銀河集団ラニアケア超銀河団(5億光年)に所属している事が分かった。 その中心にあるグレート・アトラクターの引力にひかれて動いている。 おとめ座銀河団の中心に向かって、1600K/秒の高速で動いているのだが、あまりに距離が離れているため億年単位の話である。 -将来は、銀河団の中心(ブラック・ホール)に飲み込まれる。

こんな変化がどのくらいの時間がかかるのかは、推定しないといけないが恐らく1000億年以上1兆年ぐらいの単位であろう。 これは「未来永劫」と言えるぐらいの時間なのだろう。