宇宙の話 8 日本の未来
Ⅵ 日本の未来
前節までで地球の未来を3回(+1回 まとめ)に分けて解説した。 日本という国・地域を改めて取り上げる必要はないが、全体を理解した上で、日本特有の未来を考えることにした。 しかし、どうしても数十年先の未来しか考えられない。
今から100年前の1920年に「百年後の日本」と言う題で、当時の文化人250名が予測した資料があった。 1920年は大正9年で第1次世界大戦が1918年に終わった後である。
① 人口は2億6000万人。 (現在は1億3000万人) X
② 国の支出の50%が教育費で、ほゞ100%の人が大学教育を受けている。 X
③ 漢字が廃止され、公用語は英語になっている。 X
④ 太陽エネルギーを蓄電している。 〇
⑤ 地球と火星で無線通信。 当時の通信は有線であり、無線通信を希望したもの。
情勢は変わったとは言え、すごい発想ではあるが、強いて当たったと言えるのは④⑤だけ。
未来に開発される技術や政治情勢・国際的な動きが不明な場合に、未来を予測すると、こうなってしまう。
未来の地形図
・ 地球のプレートの動きで、何万年、何億年後かの記載はないが、日本は北海道や東北地域は小さくなり、関東地方が大きく、関西地方と近づく。 一方九州は本州から離れていく。
地震の予測
- 日本は4枚のプレートの境界にあるため、地震が多い。
太平洋プレート、北米プレート(オホーツクプレート)、ユーラシアプレート(アムールプレート)、フィリピン海プレートである。
- 南海トラフは、水深4000mほどで、フィリピンプレートが日本列島を乗せたプレートの沈み込み帯である。 東海から四国沖に続いている。 過去に発生した地震では、東海・東南海・四国沖地震が連動して起こる。 しかし、近年東南海と南海の震源地境界付近(紀伊半島先端付近)で、重くて固い岩盤のある事がわかり、二つの震源地域を分割する様に存在していた。 このため、両地域の地震が連動したり、単独で発生したりする。 トラフとは、プレートの境界に発生する沈み込み部分で、細長い海底盆地の事。
- 南海・東南海・東海の連動型地震の発生をシミュレーション研究したデータがある。 これによると、1707年宝永地震を起点として、109年後(実際は147年後)の1854年安政地震、212年後(実際は227年後)の1944年東南海地震、そしてその次は、312年後の2019年南海・東南海・東海地震がM8.7程度で発生すると予測されている。 その後は423年後(2130年)M8.1-8.6、518年後(2225年)M8.5。 そして629年後(2336年)に起点とした1707年の宝永地震を再現するサイクルになるらしい。
2019年には南海・東南海・東海地震がM8.7程度で予測されていた地震は発生していないが、宝永地震も安政地震も10年から30年程度の誤差があるが、発生したのが事実である。
・ 地震は今でも予測できないが、プレート移動による地震は過去の例から、予測できるらしい。 2030年までに関東平野での直下型地震は70%の確率で起こるとされている。
- 北海道沿岸で17世紀にM8.6の巨大地震発生の痕跡が見つかった。 霧多布湿原で津波によって運ばれた海岸の砂が3Kmの奥地まで運ばれた痕跡があり、過去2500年間で少なくとも5回あった。 最近のものでは17世紀にM8.6の巨大地震があったらしい。
- このように、過去の地震の痕跡の研究が進めば、周期性のあるプレート境界付近の地震は、予測されるようになるであろう。 プレート移動によって生じた歪の影響で生じるとされる断層型地震は、周期も長いものが多く、予測は難しいようだ。
エネルギーの未来
- 日本は、石油・石炭・LPGなどの化石エネルギーを、輸入に頼っている。 しかも、電力発電は、原子力発電への恐怖から、新しい原発施設は建設されないだろうから、後退するのは明らかである。 これらを補うのに、風力や太陽光などの自然エネルギーで賄うのは、量的にもコスト的にも不可能であり、未来エネルギーの登場をまつしかない。 未来エネルギーの代表が、核融合発電であるが、少ないとはいえ放射線が出るので、建設に理解を示されない可能性がある。
- 産業界でも、大量に電気を使用する産業(例えばアルミ精練)などは、日本では生産できなくなった。
- 少々コストが高くても電力を使う家庭電力は、ソーラーパネルや水素発電の小規模発電に移行していけばよい。
- 同時に、蓄電池の進化も急務である。
食料の未来
- 主食の米以外の自給率は、OECDでも最下位に近い。 輸入に頼るが、輸入代金を支払う資金を輸出で稼げるかどうかである。
- 食料自給率を上げるために、日本を再び農業国に変えることは可能なのであろうか? 農業従事者は現在では総人口の3.2%で、約50%の人が65才以上の高齢者である。 ここ20-30年の間に、農業従事者はますます少なくなり、輸入に頼らざるを得ない。 食料を輸入に頼るには、通貨である円の価値を高めるために、輸出産業を強くする必要がある。
産業の未来
- 戦前の日本は、繊維産業の軽産業が中心で、輸出の50%以上を占めていた。 しかし、1970年になると、繊維は40%未満になり、機械類23%、鉄鋼15%と変化してきた。 自動車も7%もあった。 2006年になると、輸出の中心は、機械類が41%、自動車16%と、製造業が中心となった。 2018年には、自動車とその部品で20%を超し、半導体関連品が5%、鉄鋼4%となった。
- このように、時代背景に伴い変化しているが、輸入品も同様である。 輸入品では石油の金額ベースが増えたが、LNGの輸入増加に伴い下がってきた。 エネルギーの輸入や、鉱物輸入額が多い。 日本は明らかに、加工産業で成り立っているが、加工産業部門でも韓国・中国との競争が激化している。
- 近未来の最先端産業は明らかで、人口知能(AI)の応用と、DNA解析による生命科学技術の進化である。 中国では、法的規制が小さく、人工知能もDNAの利用も進展が速い。 10年以内には中国がこれらの分野で高い地位を占めている事が予想される。 規制が小さい分、多くの犠牲を払う事になるかも知れないが、表に出てくることのない国だから、指導的地位を築くことは間違いない。
- その時、日本はどういう状態になるか想像できるのか。 法的規制が強く技術の進歩は遅い。 その分安全ではあるが、先進国の米国・欧州・中国の特許で既にがんじがらめに縛られており、新規開発の余地は少なく、有能な科学者は日本から出ていく。 現在でも多くの分野で、海外に移り住む科学者が多い。
- こういった最先端分野の技術や機器は、中国からの輸入品が中心になっているかも知れない。 その機器はよく故障し、不完全な部分を修理する産業や、改良産業、特許の隙間産業が、日本で進化しているかもしれない。
- 自動運転のできる自動車は、中国で実現するが、表には出ない事故が多発し、世界への進出はかなり遅れる。 ドイツなど欧州自動車メーカーが先陣をつけ、日本の自動車は3番手以下であろう。
- 中国に勝つためには、最先端ではなく、二次的な派生産業をしっかり開発するべきである。 人工知能も電気で動き、自動車も電気で動く時代になる。 小さな地域を賄う発電装置(例えば安全で効率の良い水素発電)。 又、蓄電池をより軽量のタイプを開発する。(2025年ごろ予定されている固体型リチウム蓄電池) などはどうか。
- 生命科学分野では、医薬品を開発するだけではなく、手術を支援する用具や機器を開発する。 介護支援や、食べやすい食料品、飲みやすい薬、など副次的な産業を進化させる。
政治の未来
- 日本の未来で重荷になるのは、1000兆円を越える国債の償還と、いつかは起こるとされる、関東直下型地震の被害と復興である。 日本円が200円/ドル以下まで暴落する。 消費税が20%前後まで上がらないと、福祉重視の国家ができないが、理解されない。
- 日本の未来は決して暗いものではないが、明るくもない。 少子高齢化社会は当分つづき、改革されるには10年以上の歳月が必要になるが、その間に何らかの進展があるかどうかである。
- 一面的な見方かも知れないが、民主主義の問題は、自立している人達は政治への関心がすくなく、自立できない人達が自分の利益を求めるので、支持母体が流行に左右されやすい。 投票率は年々下がっているが、自立できる人達が増えているわけではなく、無関心でありながら自立できない人達が増えている。 しかし、いつかはこのレベルの人達の自己利益のための投票で、政治が動くのが民主主義である。
- 2016年トランプ大統領が「アメリカ第一主義」で当選し、イギリスでは、2020年移民の受け入れを拒んでEUから離脱する。 世界的にも自国第一主義が蔓延しつつある。 日本では、「日本第一主義」を挙げる人は今の所(2020年時点)現れていないが、未来は判らない。 このような異常事態が数年で終わればよいが、永く続けば、日本は隣国の韓国や中国そしてロシアとの友好関係をしっかりしたものにしなければならない。 そうでないと、独裁者が隣国に生まれた場合、戦争ではなくても、紛争に巻き込まれるに違いない。 しかし、現実には全ての隣国と国境問題をかかえ、経済活動にも問題を抱えている。 政治が安定し、国との利害を追求せず、ある程度のところで止まっているのが、日本にとっては得策であろう。
- 今迄の日本が政治的に幸せなことは、実質的に与党が緩やかに変化してきたことだと思う。 2大政党制のアメリカやイギリスをみると、選挙の度に右往左往する利益追求が、国民の精神までおかしくしているように思える。
- 地球の近未来は世界の情勢に影響を受けるが、それを受ける日本も情勢の変化、すなわち政治の影響が大きいので、科学的な事実の積み上げによる予測に比べ、著しく難しい。
以上で、昨年10月から始めた「宇宙の未来」をテーマに、集めていた資料から抜粋し、自分の考えを述べてきた。 出典はあるが記載していないし、個人的な意見も多いので、その程度の内容と思って欲しい。
今話題になっている武漢ウィルス(正式名:COVID-19)については、まだ流行している段階であり、科学的には今後判ってくることである。3月20日の地球の未来(3)でも説明した通り、被害は大きくても生命全体の問題とはならない。
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令和元年10月20日 宇宙の話(1) 宇宙の未来
令和元年11月21日 宇宙の話(2) 銀河系の未来
令和元年12月20日 宇宙の話(3) 太陽系の未来
令和2年1月20日 宇宙の話(4) 地球の未来(1)
令和2年2月20日 宇宙の話(5) 地球の未来(2)
令和2年3月20日 宇宙の話(6) 地球の未来(3)
令和2年4月20日 宇宙の話(7) 地球の未来(4) まとめ
令和2年5月20日 宇宙の話(8) 日本の未来