測色の話

2 表色系

2-1 表色系の歴史

色を三刺激値で表現する方法は機器の発展とともに進歩した。 しかしXYZ では人の色感覚を表現しきれていないのでもう一段階上の計算によってより人の感覚に近付ける技術が必要であった。 それが表色系である

歴史的な流れを概観すると20世紀前半に色票系が発展した。 色票系の代表例はマンセル色票(1902年)でこれは明度(V)色相(H)彩度(C)によって色空間を表わしたものである。 色票を使用して色を判断するためにどうしても観察条件の差や細かい色の差を表現するには限界がある。 とはいえ服地の身頃部分は中国の A 工場で生産して袖口のニット部分は B 工場で加工して、縫製はベトナムで加工する....というような例では、どうしてもサンプル色のやり取りを色票に頼るのが現実的になる

表色系では古くはオストワルト表色系(1920年アダムス式(1942年)をニッカーソンが改良したアダムス・ニッカーソン式(AN式)は現在も使用されている変退色および汚染グレースケールの色差の基礎となっている。 アメリカのハンターによる Lab 空間(1948年)の考え(平方根)が電子計算機が発展する以前の計算であった。 しかし電子計算機の導入が進むにつれ3乗根の計算が容易になり日本での CCM(コンピュータカラーマッチング)の普及とともにCIE1976Lab 表色系が利用された。 なおハンターの Lab と区別するため「*」マークを付けて L*a*b* と表現することになっていたが現在ではハンター式で計算されることもなくなり単に Lab と表現されているようである

(注) ネットで調べると、L*a*b*が標準的に使われているが、本文では「エクセル」で計算をすることが多く、エクセルの乗算記号「*」と、同一であり「*」マークを使わない方向でLabと記述している。 しかし、文献類のコピーを使った場合に、「*」マークが残った場合があるが、乗算を意味しているのではない。

CIE1976Lab 表色系の欠点は図-10のように色空間の位置によって数字で取り扱う色差距離と視感の隔たりが生じることである。 具体的にはYellow の色領域で DE(色差)0.5となっても全く色差を感じない。 しかしGrey 色ではDE 0.5で無視できないほどの色差を感じる。 この欠点を修正するためにCIE 1976Lab の修正式が発表された。 繊維関係ではSDC(Society of Dyers and Colourists)の CMC色差式が現在も代表的である。 色彩関係ではCIE1994Lab とその修正 CIE2000 Lab がある。 CIE2000Lab はJIS Z 8730「色の表示方法−物体色の色差」として登録されており今後は色差計算の中心になろう

 

 

毎月20日を「測色」に関連する話を掲載していましたが、前回までで今迄に本にも記載されていない話を、中心にまとめていました。ここからは新しい事もなく、過去に

作成した資料や論文の写しになるので、一旦掲載をやめて、新たに調べ始めた「孫に伝えたい未来」を、「宇宙から銀河・太陽・地球」と壮大なスケールの話にしたいと思います。1月20日は、そのはじめとして、1.宇宙の未来 を予定しています。

尚、学研パズルの解答の掲載は、火木土を予定しています。